- 2024.11.18
コラム更新!第八十一稿「電子文書に対応できない時代遅れの文書管理規程」―DX時代の文書管理へ―
■コロナ禍で進んだペーパーレス、はんこレスで文書管理規程が形骸化
コロナ禍で大企業から中小企業までテレワークの導入が始まり、出社しなくても仕事ができる電子メー-ルや電子会議の利用が拡大しました。その結果、ペーパーレスとはんこレスも進み、WordやExcelなどの電子文書のやりとりだけで業務が遂行されるようになりました。
■文書管理規程に従わない電子文書が大量発生
ペーパーレスとはんこレスによって、業務効率が圧倒的に上がった反面、業務上のトラブルも増えました。電子メールの宛先や電子会議の参加者からはずれたキーパーソンが事情を知らされないまま業務が遂行されてしまい、問題が起きたという話しをよく聞きます。
本来、企業には役員会などで承認された文書管理規程があり、稟議承認に関するルールが明記されているはずなのですが、多くの文書管理規程が紙文書ありきで電子文書のまま業務が遂行されることを想定していないのです。
■メールサーバ、ファイルサーバに散在する秘密文書
文書管理規程が想定していないペーパーレス、はんこレスの進展は、秘密文書の管理にも影響を与えています。秘密文書にはマル秘などのスタンプやシールで明示する専用の鍵付きキャビネットで保管するといった対策が一般的ですが、印刷せずにWordやExcelなどデジタルファイルのままで利用・保管することが多くなる中で、電子文書形式においてどのような表記や保護をすべきかがあいまいになってしまっているのです。秘密文書を印刷する前の電子文書自体も秘密文書であることも明白にもかかわらず、何の対策もなくメールサーバやファイルサーバ上に保存されたままというケースも少なくありません。
■文書管理における機密性・完全性・可用性確保の重要性
そもそも企業における文書管理では機密性(秘密保持)だけでなく、完全性(改ざんされない)、可用性(いつでも使える)の三つの要件を確保しなければなりません。WordやExcelのままで注文書や請求書を保存していては改ざんされないこと保証できません。少なくともPDF化し、電子帳簿保存法に対応するためにはタイムスタンプも必要になります。
可用性についてもファイルサーバから必要な電子文書をフォルダ名とファイル名から確実に探し出せるでしょうか。全文検索機能があっても、必要なキーワードが文書の中に入っていなければヒットしません。
■アクセス制御やステータス管理ができる文書管理ツールが不可欠に
電子文書における機密性(秘密保持)を確保するためには、その電子文書にアクセスできるアカウント(ユーザID)を限定し、閲覧のみ、編集可能などの権限設定が必要です。担当者が作成中の草稿文書と承認済みの正式文書とを区別するためには、ワークフローのようなステータス管理も必要になるでしょう。
残念ながら一般的な電子メールやファイルサーバでは、こうしたきめ細かいアクセス制御やステータス管理ができません。一部の企業において「BOX」のようなセキュアな電子文書管理ツールの導入が進んでいるのもそのためです。
電子文書の利用が日常化している企業では、紙媒体前提の文書管理規程を見直すとともに、電子文書管理ツールの導入を検討するべきではないでしょうか。