- 2025.09.10
コラム更新!第九十一稿「社会人として問われる常識力(社会人基礎力)-非常識がトラブルを引き起こす-」
■なぜ「常識力」が問題になるのか
近年、職場で若手社員が「常識力」の不足によりトラブルを引き起こす事例が目立っています。社内外へのメールで不適切な表現を使って取引先から不信感を買ったり、会議や訪問時のあいさつや礼儀を欠いて社内外での評価を下げてしまう、契約や規則に対する理解不足から法務的なリスクを発生させるといったトラブルがあちこちで起きています。こうしたトラブルは、単なる「常識不足」として終わらず、組織全体の信頼や事業リスクにつながりかねません。
■経済産業省が提唱する「社会人基礎力」
経済産業省では人材力強化の重要性を示すために、以下の三つの能力から構成される「社会人基礎力」を提言しています。
・前に踏み出す力(アクション)
主体性をもって行動し、責任を果たす力。
・考え抜く力(シンキング)
課題を発見し、論理的に考え、解決策を導く力。
・チームで働く力(チームワーク)
協調性やコミュニケーション力を発揮し、組織に貢献する力。
この三つの能力をそれぞれを裏返してみれば、「常識力」と重なることがよくわかります。
・前に踏み出す力(アクション)→言われたことしかしない
・考え抜く力(シンキング)→意味をよく考えない
・チームで働く力(チームワーク)→自分さえよければよい
■職場で求められる「常識力」とは
経済産業省の「社会人基礎力」をもとに、トラブルを避けるために必要となる「常識力」を考えてみると、以下の三つの能力が浮かび上がってきます。
・課題設定力(前に踏み出す力)
言われたことだけをするのではなく、先のことを考えてやるべきことを自ら考える。
・状況判断力(考え抜く力)
場の空気を読み、相手や組織に配慮し、将来に向けて最適・最善と思われる行動をとる。
・情報伝達力(チームで働く力)
知り得たことについて、関係する人や部署に正確かつタイムリーに伝達する。
■狭義の「常識力」
上記三つ目の「情報伝達力」を発揮するためには、社内ルールや関連法令、一般常識(あいさつや作法、社会慣習等))に関する知識が前提条件となります。これらは、まさに狭義の「常識力」とも言えるものであり、特に若い社員に欠落していることが多いようです。対策としては、教育や研修、コーチング、OJTといった従来からあるものを活用することになりますが、そもそもの人としての倫理観(善悪や損得、人生目的等)が一致していない限り、組織が求める「常識力」を養うことは難しくなります。社訓や行動指針など社員として求められる自社哲学について今一度、見直し強化することをお勧めします。