- 2021.02.4
コラム更新!知っているにはレベルがある-「聞いたことがある」から「教えられる」まで-
■アバウトな能力把握がトラブルの元
どれほどすぐれた戦略があっても、どれだけ洗練されたしくみがあっても、そこで働く社員の能力が低ければトラブルは起きてしまいます。研修やOJTを何度実施してみても能力不足が課題になることが多いのはなぜでしょうか。社員教育のやり方に問題があるのでしょうか。実は能力把握、どれほどの能力を獲得、向上できたのかという測定のしかたに問題があるのです。
■能力には五つのレベルがある
人の能力には「知っている」、「理解している」、「やったことがある」、「一人でできる」、「教えることができる」の五つのレベルがあります。社員研修を一回だけ受けただけでは、「知っている」の段階にすぎません。研修を受けた後、わからなかったことを確認したり、難しかったところを再学習したりして、ようやく知識は理解され「身に」つきます。さらに、知識があるだけでは使いこなせません。実際にその知識を実践してみてはじめて理解が深まります。その実践も自分一人でできてはじめてマスターしたと言えるでしょう。しかし、わかっているつもりでも人に説明しようすると難しかったりします。
■自分や部下の能力レベルを知ることの重要性
自分の能力が五つのレベルのどこにあたるのかがわかっていなければ、何ができて何ができないのかの判断ができません。部下を持つ立場であれば、部下の能力レベルを把握できていなければ、適切な指示や監督をすることは不可能です。特に、人事異動の時期では前の職場では仕事ができた人も、新しい職場では能力レベルが下がるかもしれません。能力レベルの高い人が昇任することで、いったん能力レベルを落としてしまうのも普通に起こることなのです。
■能力レベルにもとづく教育訓練、要員配置を
一人一人の能力レベルの差を無視した社員教育やOJTをどれほどやっても、効果は期待できません。習い事の多くに入門、初級、中級、上級コースが用意されていたり、座学の後に実習が用意されているのは、能力レベルに応じた教育訓練を行おうとしているからです。
現場が忙しくて社内研修やOJTにあまり時間が取れないことが、皮肉にも、現場でのトラブルを引き起こすという悪循環を招いていることも少なくありません。ISOマネジメントシステムにおいて、力量モデルの策定や教育訓練の実施が要求されていることも、それだけ重要なことだからなのです。