- 2022.07.6
コラム更新!第五十一稿「組織に働く慣性の法則」-変革を拒む現状維持への執着-
■組織にもある慣性の法則
物理学の基本法則の一つ「慣性の法則」は、「静止している物体はいつまでも静止し続ける。」。「運動している物体はいつまでも等速直線運動を続ける。」というものです。この慣性の法則は組織にもあてはまると言われています。組織には強い慣性の力が働いていて、その風土を変えるのはそもそも非常に難しいのです。
■三つの組織慣性
組織慣性には三つあると言われています。一つ目は個人の慣性、二つ目は職場の慣性、三つ目は会社の組織慣性です。個人の慣性とは、社員一人一人がこれまで培ってきた成功体験や失敗体験によって、思考や行動パターンが凝り固まってしまうことです。職場の慣性とは、研修を受けて、情熱を持った社員が職場に戻ると、やる気のないメンバーによってその情熱を冷めさせられてしまうようなことです。最後の会社の組織慣性は、社長などトップの姿勢や言動です。トップ自身がやっても無駄だと思っていては社員も動きようがありません。
■イノベーティブな風土と組織のコミュニケーションの関係
コーチング研究所が2015年に実施した、イノベーティブな風土と組織のコミュニケーションの関係に関する調査というものがあります。その調査では、以下の傾向があることが報告されています。
・イノベーティブな風土×組織のトップ同士のコミュニケーション→相関係数0.76
・イノベーティブな風土×現場の部門間シナジー→相関係数0.71
・組織のトップ同士のコミュニケーション×現場の部門間シナジー→相関係数0.85
「上司は他の上長と十分なコミュニ ケーションを交わしている。」と感じる人が多い組織では、「私達社員は、相手がちがう部署であっても、領域を超えて協力している」と回答している人が圧倒的に多くなっています。イノベーティブな風土の高い組織は、組織のトップ同士のコミュニケーションが活発であり、現場でイノベーティブな風土をつくる事が難しいのは、起点となる各組織のトップ間のコミュニケーションが不足していることに起因しているのです。
■トップ同士のコミュニケーション強化の必要性
組織の風土を変えて、イノベーションを推進していくためには、各組織のトップ同士のコミュニケーションの強化が重要です。自部署だけで考えれば是であることであっても、他部署からみれば要改善かもしれません。組織における慣性の法則を打ち破るためには、トップ自身が現状維持のわなから抜け出さないといけないのです。