- 2021.03.23
コラム更新!書いただけでは意味がないBCP事業継続計画-本当にそれで動けますか-
■中小企業まで要求されるBCP
大地震や大型台風、重大パンデミックなど企業の事業活動に影響を与えるほどの大きな災害や事故は「万が一」から「いつなんどき」へと起きる確率が高まっているようです。
特に阪神大震災や東日本大震災の経験から大手製造業を中心に、BCP(事業継続計画)策定の必要性が叫ばれ、中小企業庁ではサプライチェーンの断裂を避けるために、中小企業におけるBCP策定の重要性を呼びかけています。中小企業庁ではBCP策定用のガイドラインやテンプレートを提供しており、何もないところからBCPをつくる必要はありません。
■BCP策定のメリット
BCPを策定しておけば、いざというときに事業活動を停止することなく継続させることができるため、損失を最小限に抑えられるだけでなく、BCP策定の時点で取引先から信用を高めることができます。また、令和元年成立・施行された「中小企業強靱化法」にもとづいて、中小企業が策定したBCPを経済産業大臣が認定する制度ができています。認定を受けた中小企業は、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられます。
■有事まで塩漬けされるBCPは有効か
BCPを策定する企業が増えている一方で、はたして本当にBCPは有効なのかという声も出てきています。有事まで塩漬けされるBCPは本当に有事の際に有効に機能してくれるのでしょうか。BCPの策定には自社の業務プロセスや必要リソースなどをきめ細かく洗い出した上で、調達可能な代替リソースや日常とは異なる業務プロセスを設計しておくことが必要になります。認定を受けるための「形」だけのBCPでは、虚偽の安心の連鎖によって、より深刻な事業停止を生み出しかねません。
■平時に組み込むBCP
実際には使えない計画を策定することは無意味です。本当に計画に書かれたとおりにやらないといけないとしたら、とてもできないと反対する人は出てこないでしょうか。BCPの内容を真剣に考えるということは、平時における効率性や生産性向上の取り組みと相反するはずです。
いつ起きるかわからないような有事のためのBCPに社員がどれほどの意義を感じているでしょうか。BCPの策定には、何かを犠牲にしてでも事業継続させるのだという強い覚悟が必要なのです。むしろ、平時においても、業務の柔軟性や安定性を高めるための取り組みとして、BCPの内容を組み込んでいくべきではないでしょうか。予備の機械設備や在庫の確保や、代行要員の教育訓練など、平時における事業継続性を高める取り組みこそ取り組んでいくべきなのです。