- 2024.09.12
第七十九稿「組織の壁を越えるのはなぜ難しいのか」―隣の部署に転がるビジネスチャンス
■自部署の利益ばかりを追求する縦割組織
自分の部署の利益ばかり考えて他部署のことを思いやらない、他部署のために貢献しようとしない縦割組織の問題がよく議論になります。自部署の利益を優先してしまう原因には、忙しすぎて他部署のことまで考える余裕がなかったり、自部署の評価が上がることを第一に考えてしまうためなどが考えられます。同じ会社の中であるにもかかわらず、部署の中に仲間意識が、他部署に対しては縄張り意識が生まれていることが少なくないのです。
■他部署に転がる未活用のリソース
顧客からの新規依頼に対してリソースやノウハウ不足のために対応できないということは当然にあることです。しかし、実は必要なリソースやノウハウが他部署にあるとしたらどうでしょうか。別の営業部門の担当者が類似する営業案件の経験があるかもしれません。他の製造部門の担当者が類似する製造方法の経験があるかもしれません。縦割組織は大きな組織を分断された小規模組織の烏合の集まりにしてしまう危険性があるのです。
■MVVの見直し・発信で仲間意識を再形成する
ベンチャー企業が創業時代にはチーム力を発揮できていたのに、組織が大きくなった途端にチームワークができなくなったという話しをよく聞きます。小人数のときはトップの行動が社員に見えやすくかったのが、組織が大きくなった途端に会社がどこを向いているのか、トップがいないときにどういう判断をするべきなのかがわからなくなってしまうのです。組織が大きくなればなるほど、チームワークを形成・維持するための努力が重要になってきます。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を見直して、社内外に発信するという取り組みもこのためと言えるでしょう。
■DX推進は組織の壁を越える大きなチャンス
DXデジタル・トランスフォーメーションの取り組みは組織の壁を越える大きなチャンスだと言えます。新しい商品やサービスの創造や、ビジネスプロセスの革新的な見直しなど、現状の延長としての業務改善ではなく理想を達成するための業務改革を目指すDXでは、組織の壁を越えた活動が不可欠であり、MVVを共有する仲間として共通する理想に向かって一致団結することが求められるからです。
■部署をまたがるプロジェクト活動のすすめ
ダイバーシティやインクルージョンなど社員の多様性を認めようという動きの中で、全員が同じ行動をとるような社員旅行などの会社イベントを行うことが難しくなってきています。しかし、全社員が仲間として一つの目標のために行動することはダイバーシティやインクルージョンと反するものではありません。むしろ、多種多様な考えを持つ社員や利害が一致しない部署同士が集まって、共通の課題のためにいっしょに働くことができなければ組織力はまちがいなく低下していくばかりでしょう。部署をまたがるプロジェクト活動であるべきDXの取り組みはまさに未来への生き残りをかけた企業活動と言えるのではないでしょうか。