- 2020.01.6
ISOは本当に経営者のために役に立っているのか ―ISO9004成熟度モデルによる継続的改善の勧め―
■ISOは本当に経営に役立つツールなのか
ISO9001などISOマネジメントシステムへの取り組みは品質保証や環境保護、情報セキュリティなど経営品質の向上に結びつくツールであると言われることが多い。
しかし、実際は認証取得とその維持のための活動にとどまっている企業がほとんどではないだろうか。
何をやるにも文書と記録、計画と目標、レビューに監査とISOマネジメントシステムは手間がかかりすぎるという声をよく聞く。
しかも、その活動には多くの人材と資金、時間という貴重な経営資源の投入が必要であり、とても経営者のために役立っているとは言いがたいと思う経営者は少なくないだろう。
経営者だけではない。減点方式による内部監査は従業員のモチベーションさえ奪っていく。
ISOに取り組めば取り組むほど、生産性も意欲も失ってしまうという状況をまのあたりにしては、ISOを経営に役立つツールと言われてもなかなか納得のいくものではないだろう。
■ISOと同じPDCAサイクルを持つトヨタの改善活動はなぜ世界に広がったのか
徹底的な無駄の排除で生産性向上を実現するトヨタの改善活動は、KAIZENとして世界に広がっている。
その意味は英語で「Continuous Improvement」であり、ISOマネジメントシステムと同じPDCAサイクルによる継続的改善を目指すものである。
ISOマネジメントシステムにおいても継続的改善は重要な原則であり、KAIZENとの親和性も高いはずである。
にもかかわらず、効率化を実現し続けるKAIZENに対して、ISOは手間がかかりすぎることを嘆く声がなくならない。どこかに大きな間違いがあるのではないだろうか。
■去年と同じ活動ならば効率化して手間がかからないようにすべき
経営者からみれば、従業員が仕事をしてくれるのであれば、出来映えが優れていることは当然期待することである。
しかし、同じ仕事を繰り返すのであれば、工夫して手間もコストもかからないように効率化すべきである。
経営環境の変化の中で、やるべきことはいくらでもあるにもかかわらず、毎年繰り返すだけのISO活動に手間がかかると言われては納得いくはずもないのである。
■KAIZENと同じように効率化を是とするISO9004の成熟度モデル
ISOマネジメントシステムの有効性に対する疑問を払拭してくれる答えが実は存在する。
「ISO9004:2018 持続する成功を達成するための指針」がそれである。I9004:2018の序文には、「ISO9001:2015は組織の製品及びサービスへ信頼を与えることに重点を置いているが、この規格は、組織の持続的成功を達成する能力へ信頼を与えることに重点を置いている。」と書かれている。
そして、「この規格は、JIS Q 9000:2015で記載されている品質マネジメントの原則を参照しながら、組織が、複雑で、過酷な、刻々と変化する環境の中で、持続的成功を達成するための手引を提供している。」とも述べている。
巻末には、組織の成熟度モデルを5段階レベルに分けた自己評価ツールが掲載されており、その中のレベル3においては、マネジメントシステムアプローチが効果的かつ効率的に確立されていることが要求されている。
ISO9001ベースの内部監査では、規格要求事項に対する適否をチェックすることを要求しているのに対して、ISO9004の自己評価ではそれをさらに効率的効果的に行うことをめざして継続的改善せよと要求しているのである。
■ISO9004成熟度モデルによる継続的改善の勧め
本連載は、ISOを真に経営者のためのツールと呼べるようにするために、ISO9004をガイドラインとして成熟度モデルによる継続的改善に取り組むべきであることを提言するものであり、そのための考え方、取り組み方について紹介していくことをめざしている。
減点方式ではなく加点方式による自己評価、内部監査へのパラダイムシフトが必ず組織の経営力向上に資することを願ってやまない。
第二話に続く・・・