- 2020.02.6
あいさつはなぜ必要なのか? ―あいさつが持つ本当の意義を理解する―
用事があって訪問した会社で、目の前に社員がいるにもかかわらず、声をかけてくれないという経験はないだろうか。忙しいからなのか、そこにいる人が目を合わせようともしないことすらある。朝、人に会えば「おはようございます。」、誰かが帰るときには「お疲れ様。」、安全に注意しなければならない職場ならば「ご安全に。」「ご苦労様です。」など、どこにでも共通するあいさつもあれば、組織によって異なるあいさつもあるだろう。問題は、あいさつ自体をしない、形だけのあいさつに終わっているという場合である。「あいさつは徹底できていますか?」と言うと、ほとんどの会社で「うちは大丈夫」ですという答えが返ってくる。はたして本当だろうか。
■形だけのあいさつ励行に意味はない
あいさつしないと怒られるからやっているという状況に少しでも意義はあるのだろうか。実は、むしろ問題状況を見えにくくする分、厄介である。形だけのあいさつをしている、やる気をなくした社員をあなたは見抜けるだろうか。心の中で思っていることと、口に出していることが違う社員がいるとしたら気持ち悪くないだろうか。命令だから、習慣だからという理由だけで行っているルーチン(決まり事)に意味などない。そこには問題意識も改善意欲も生まれようがないのである。
■ストロークとしてのあいさつ
心理学では交流分析において、人の心に必要な栄養を「ストローク」と呼んでいる。人は一人では生きていけない存在であり、人と交流しようとする「刺激飢餓」(心理的な飢え)を持つといわれている。そしてこの心理的な飢えを満たす刺激を「ストローク」と呼いでいる。あいさつはまさに「ストローク」であり、あいさつが不足すると心理的不安な状態に陥りかねない。心が不安定な状態で仕事のパフォーマンスが上がることは期待できない。あいさつの重要性を知る人が、取引先を訪問してまずはあいさつの良し悪しをうかがうのには、それなりの意味があるからである。
■あいさつが持つマネジメント上の意義
あいさつはマネジメント的にも大きな意義がある。いつものあいさつを基準として認識しておけば、元気のないときやハイテンションのときなど、いつもと違う状態を察知することができる。外国人労働者もいつ孤独感にさいなまれるかわからない。いつもと違うテンションに気が付くことができれば、ミスや事故を防ぐことができる。誰もが相手を思って心からあいさつする職場では、「どうしたの?元気がないね。何かあったら相談してね。」という掛け声が自然と出てくるものである。それがまさに人が欲している会話の「ストローク」なのである。