- 2021.01.14
画一的なルールでは回らないダイバーシティとマイノリティの時代-マネジメントも監査も変革が必要に-
■イスラム対応だけでは済まされない外国人労働者対応
東南アジアに工場設立することが多くなった製造業は工場内にモスクを設置したり、食堂で豚肉を出さないようにしたりと、頭を悩ませてきました。しかし、今では日本の工場でも外国人労働者が働いていることは珍しいことではなくなっています。そもそも日本人と外国人とでは何もかもが違っています。リーガルコードと呼ばれる法律もヨーロッパと米国、アジアでは大きく概念も体系も大きく異なっており、モラルコードと呼ばれる道徳倫理でも正しいことと悪いことの価値観も同じではありません。さらにモスクやハラールのようなレリジャスコードも同じ宗教の中でも違っていて同一に扱うと大きなトラブルを引き起こすことになります。同一民族国家の意識が強い日本人には、考えられないような多様性が世界には存在していて、それに対応していくことがグローバル化に必要なことなのです。
■マイノリティにやさしくない日本の組織
暗黙の了解、言わなくても伝わるという日本の文化は、外国人労働者にはたまったものではありません。企業理念は翻訳しても意味がわからず、従業員への通知は漢字まざりの文章、わからないことは聞かないと教えてもらえない、といった職場環境で働く外国人労働者はどのように感じているのでしょうか。日本人にしても状況はあまり変わりません。幼い子供を育てる女性社員や高齢者の親を介護する中高年社員、身体障害者やトランスジェンダーなど、様々な事情を抱える社員に対してきめ細かい対応をできている管理職はどれほどおられるのでしょうか。管理職もまた、部下と価値観を共有できずに困惑しており、過去の経験が役に立たなっていく中で自信喪失したり、孤立状態に陥ってしまう人も少ないないでしょう。
■画一的な規程やISOマニュアルが制度疲労に
ダイバーシティ、マイノリティが問題になっていなかった時代につくられたルールは画一的であり、今の時代には合いません。大企業向けにつくられた規程集やISOマニュアルのサンプルが中小企業には使えないように、社員全員をひとくくりにして考えたしくみは全て制度疲労を起こしているのです
■監査から統制自己評価(CSA:Control Self-Assessment)へ
全社画一的なルールを策定し、その遵守状況を一元的に監査するというマネジメントの形は、ダイバーシティ、マイノリティの時代にそいません。様々な価値観や事情があっても共通する基本ルールやガイドラインだけをトップで定めて、詳細なルールは現場に任せるというスタイルに移行していかなければ、ますます多様化が進んでいく中でマネジメント崩壊を起こしてしまいかねません。監査もまた、各現場が自ら行う自己チェック(CSA統制自己評価)の計画や取り組み、結果について審査するという形態に移行していかなければなりません。環境変化を後追いして規程修正や拡張していくスタイルではマネジメントの肥大化を生み出すだけです。スリムでかつ効果的なマネジメントを実現していかなくては、間接業務に時間も資源も消費して競争優位性を失っていくかもしれません。