- 2021.07.2
ISO9001 8.4データの分析の実態-DX時代のISO9001へ-
■ISO9001 はデータ分析を要求している
ISO9001の「8.4データの分析」には、以下の要求事項が規定されています。
組織は、品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証するため、また、品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価するために適切なデータを明確にし、それらのデータを収集し、分析すること。この中には、監視及び測定の結果から得られたデータ及びそれ以外の該当する情報源からのデータを含めること。
データの分析によって、次の事項に関連する情報を提供すること。
a) 顧客満足(8.2.1参照)
b) 製品要求事項への適合性(7.2.1参照)
c) 予防処置の機会を得ることを含む、プロセスと製品の特性及び傾向
d) 供給者
しかし、ISO9001を認証取得している企業で「8.4データの分析」がしっかりと行われているという話はあまり聞きません。顧客満足度調査や不適合発生グラフなど最小限の対応しかできていないところが多いのではないでしょうか。
■データ分析の軽視はISO9001を弱体化させる
PDCAマネジメントを回すことを最重要視しているISO9001の仕組みからすると、データ分析を軽視することは、改善のサイクルが有効に機能しなくなることを意味します。本来ならばISO9001のプロセスアプローチによって、仕事を連鎖的に計画されているはずですから、品質や原価、生産性といった最終的なパフォーマンスの原因はどこにあったのか、それぞれの仕事がどの程度貢献したのかといった傾向分析が効果的に行えるはずなのです。
■ISO9001「8.4データの分析」をDXやイノベーションの起点に
ISO9001「8.4データの分析」は、昨今注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みと大変相性のよいものです。経済産業省では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。これは、ISO9001を経営ツールとしてイノベーションを起こそうとする取り組みと完全に一致します。
DXへの取り組みを一から始めなければならないと考えるのではなく、足もとのISO9001の仕組みから出発してみるのもよいのではないでしょうか。