- 2022.02.9
第四十一稿「あきらめることと優先すべきことの見極め」-目標にはトレードオフがつきもの-
■トレードオフの認識違いがトラブルを生む
トレードオフとは「両立できない関係性」を意味します。二つの事柄があるときに一つを選ぶと他方が成り立たない、同時に成立しない目的や目標、課題は多いにもかかわらず、同時に追い求めてしまうケースは少なくありません。その結果、人によって優先順位や選択基準に相違が生まれ、組織内に混乱が生じてしまいます。
■トレードオフ関係の典型例
ビジネスシーンにおいてよくあるトレードオフは、品質とコストと納期の関係です。高品質、低価格、短納期を組織目標として掲げる企業がありますが、本来、この三つは対立するものであり、優先順位付けが必要になります。もし、本当に高品質で低価格なものを販売したとすると、買う側は得をしますが売る側は損をしてしまいます。品質とコストと納期のような、トレードオフ関係にあるものでは、最適なバランスを取れるかどうかが重要になります。
■SDGsがもたらす新たなトレードオフ問題
環境保護や人権尊重などのSDGsへの取り組みは企業にとって、売上や利益の増大とトレードオフの関係にあります。言葉だけで社会貢献をうたうだけでは誰からも信用されません。工場や建築現場での労働安全もまた、コスト削減や生産性とトレードオフの関係にあります。企業トップが環境保護や人権尊重、労働安全をどれだけアピールしようとも、現場のリーダーが業績アップにプレッシャーを感じていれば、売上、利益を優先することは当然の成り行きです。
■トレードオフは必ず見える化し、合意形成する
トレードオフは必ず見える化し、合意形成しなければなりません。たとえば、商品開発プロジェクトでは、よく高い商品価値と早い市場投入、低コスト、運用のしやすさなどが同時に求められることがあります。この場合であれば、以下のようなトレードオフの見える化と、合意形成が必要になります。
■あきらめること、妥協することの大切さ
トレードオフ問題はタブー視されやすく、議論から避けられたり、うやむやにされることが多いのです。後ろ向きなことを言うなと叱られて、口を閉ざしてしまう社員もいるかもしれません。その結果、社員や現場リーダー、中間管理職、トップなど立場や状況によって、言うことが変わってしまい、結局、どの目的、目標、課題も中途半端に終わることになってしまいます。目的や目標、課題には目標にはトレードオフがつきものであるとすれば、何かをあきらめること、妥協することは不可避なことであり、だからこそ、はっきりとした意思決定と認識合わせが必要なのです。