コラム

コラム

  • HOME
  • 第七十六稿「コンプライアンスはなぜ必要か」―法律はなぜあるのかを考えてみる―
  • 2024.06.12
  • 第七十六稿「コンプライアンスはなぜ必要か」―法律はなぜあるのかを考えてみる―

■コンプライアンス違反はなぜなくならないのか
企業の不祥事が続いています。ひとたび不祥事が起きてしまえば、長い時間をかけて築き上げてきた顧客からの信用信頼も一瞬で吹き飛んでしまいかねません。社員教育はどこの会社でも行っているはずなのに、コンプライアンス違反が起こってしまいます。コンプライアンス違反はなぜなくならないのでしょうか。

■企業信用を失うから守らないといけないのか
そもそもコンプライアンスは何のために必要なのでしょうか。法律や社内規程はルールだから守らないといけない、企業信用を失うからコンプライアンスは必要というのでは、手段が目的となっているだけで、結局、何も説明できていません。どうして法律を破ってはいけないのかという問いかけに対するきちんとした答えを持っておかないと、表向きだけわかっているふりをしているだけの社員を増やすだけになりかねません。

■なぜその法律を守らないといけないかの大元を知る
そもそもなぜ法律を守らないといけないかの大元を知っておかないと、「まわりの人がみんなやっているから」、「そんなに悪いことは思わなかったから」という理由で、誰もが違反を犯してしまうリスクを生んでしまいます。誰かにやってはいけないと言われるからやらないのではなく、社員一人一人が自分自身の判断でやっていいことといけないことの区別をつけることができなければ、複雑さが増すばかりの現代社会において「清い人」でいることが難しくなっていくでしょう。

■善悪ではなく善悪で判断できる力を
なぜコンプライアンスが必要かという質問には、「上場するのに必要だから」、「取引先がCSR調達で要求しているから」、「顧客が安心してくれるから」などのように、損得に関わる答えが多くかえってきます。確かにコンプライアンスの善し悪しは企業信用やブランドなど結果として現れてきます。しかし、これではもし上司が間違ったことを指示したり、顧客が不適切なことをお願いしてきたとき、どのような行動を取るのでしょうか。ものごとの良し悪しを損得ではなく、善悪できちんと判断できる力を身につけておくことが必要なのです。

■商人としての道-商売十訓に立ち返ろう
「商業界」創立者の倉本長治氏がまとめた「商売十訓」というものがあります。

・損得より先きに善悪を考えよう
・創意を尊びつつ良い事は真似ろ
・お客に有利な商いを毎日続けよ
・愛と真実で適正利潤を確保せよ
・欠損は社会の為にも不善と悟れ
・お互いに知恵と力を合せて働け
・店の発展を社会の幸福と信ぜよ
・公正で公平な社会的活動を行え
・文化のために経営を合理化せよ
・正しく生きる商人に誇りを持て

顧客と顧客価値のために行動せよと説いたドラッカーにも通ずる内容であり、顧客のため社会のために誠実に行動していけば、会社は発展するとしています。売上や儲けさえあがれば何をしてもいい、何でもありというのでは泥棒や詐欺師と本質的にはいっしょです。私たちは正しい生き方をする中で、他社とともに幸せを築いていくのだという揺るぎのない倫理観を持つことが自信と安心を得ることにつながるのではないでしょうか。