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  • 電子メールでの安易なビジネス約束に注意 -代理権がない社員が交わしたビジネス上の約束も有効と判断されるかも-
  • 2020.10.28
  • 電子メールでの安易なビジネス約束に注意 -代理権がない社員が交わしたビジネス上の約束も有効と判断されるかも-

■社員がする契約の有効性
会社間で契約を締結する際に代表取締役の名前で署名押印する場合は、契約効果が会社に帰属することは明らかですが、社員が契約相手の場合はどうなるでしょうか。営業部長や工場長といった役職者の場合は、決裁及び契約締結の権限を委譲された正当な者として想定されるので問題ないでしょうが、係長や主任、あるいは役職なしの社員の場合ではどうでしょうか。その場合でも、その会社が特に異議を唱えず是認してきたという事実があれば契約相手側が保護されます。(悪意や重大な過失がある場合は除きます。)

■契約の意識すらない電子メールでのやりとり
ここで問題としたいのは、契約が契約書の作成なしで行われる場合です。口頭で行われた契約には証拠が残りませんから、双方とも契約書の締結をしようとするので、不適切な契約行為は発見され事前阻止されるでしょう。しかし、これが電子メールの場合ならばどうでしょうか。

■記録が残る電子メールでのビジネス約束
前述したとおり、契約書なしでも越権者でも契約は成立してしまいます。さらに電子メールの場合は記録も残ってしまいます。本人が話し言葉のつもりでもビジネス上の約束をしたとしても文書として記録が残ってしまうのです。相手先との関係が良好で、社員による不適切な電子メールでのビジネス約束を取り消せたとしても、信用の低下は避けることはできないでしょう。

■はんこレスの流れに注意も必要に
世の中で進んでいるはんこレスの流れにも注意が必要です。はんこを押すというプロセスによって内部統制が機能していた取引業務が、不適切な契約行為というリスクにさらされる恐れがあるのです。不要な押印行為を排除して事務の生産性を上げることに何ら問題はありません。しかし、そこに込められていた業務チェック機能まで無効になるようでは、本末転倒です。はんこレスが進む今だからこそ、なぜ今までははんこが必要だったのかについて業務教育の重要性が高まっているのではないでしょうか。