- 2022.03.9
第四十三稿「過度な属人化が引き起こす隠蔽・不正」-トラブルの温床となる業務の属人化-
■表に出にくい属人化の闇-表に出たときは時すでに遅し-
特定の人しか業務を担当できない状態が長く続いてしまうと、その人が不適切なことをしていても誰も気づけなくなってしまいます。業務上のミスをごまかす程度であればまだしも、代わりがいないことをいいことに自分勝手な行動を取ったり、業務引継なしで辞めてしまい業務がまわらなくなるといったことが起きてしまいます。さらには、度を超した接待から始まって、賄賂や業務上横領といった犯罪に手を染めてしまう重大なケースすらあります。
■属人化が招く様々なリスク
属人化が招くリスクには様々なものがあります。前述したようなミスの隠蔽や不正の温床となるばかりではなく、属人化した社員が仕事をさぼったり休んだりすると、業務が止まってしまい、場合によっては顧客への納期にまで影響を与えることになります。また、属人化によって若手社員などの人材が育たないという組織成長の問題はもっと重大かもしれません。特定のノウハウを持った社員だけが特別扱いされる職場では不公平感が蔓延し、社内の人間関係も悪化することも考えられるでしょう。
■なぜ属人化は起きてしまうのか
属人化は起きてしまう原因には組織の問題と本人の問題の二つがあります。組織の問題には、人員不足や業務の非標準化、専門知識の偏りなどが、本人の問題には、仕事が奪われることや評価が落ちることへの不安などがあります。属人化が起きてしまう業務は特殊な仕事だけに限られるわけではありません。「うちの経理のやり方は他社とは違う。」とか「うちの調達は取引条件が複雑だ。」といった言い方でいくらでも難しいものにしてしまうことができるからです。
属人化は起きてしまう原因に共通する根本原因は、「属人化」をしかたないと思ってしまう企業文化にあります。「属人化」を絶対悪と考える企業では、「属人化」が起きてしまうような原因に目を配って、できる限りの対策を講じています。
■属人化を排除するために何をすべきか
属人化を排除するための対策はその原因の反対になります。人員不足に対しては全ての業務について副担当を設けること、業務の非標準化については業務フローなどによる仕事の見える化を図ること、専門知識の偏りについてはナレッジデータベースによる知識の顕在化と共有を推進すること、そして、仕事が奪われることや評価が落ちることへの不安に対しては、むしろ後継者育成や組織力向上への貢献性を人事評価点として重視することなどが挙げられます。
■現代の目付役「内部監査」の重要性
最後に、属人化を排除する効果的な施策として、内部監査の重要性についてふれておきます。
江戸時代には、家臣が不適切な行動を取らないように監視する「目付」という役職がありました。目付には監視役としての恐いイメージが強いですが、論功行賞の確認も行うなど武家組織における不公平感を排除する役割も果たしていました。現代企業における内部監査の原点も目付役にあります。表面的なルールの遵守状況だけをチェックするのはでなく、職場に潜んでいる不健全性や不公平感を探し出し、風通しのよい職場を維持・向上させるという重要な役割を果たしているのだという認識を持っていただきたいと思います。