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  • 第六十五稿「行動経済学から学ぶ賢い働き方とは」-ヒューリスティックとバイアス-
  • 2023.07.13
  • 第六十五稿「行動経済学から学ぶ賢い働き方とは」-ヒューリスティックとバイアス-

■効率的だが正確性に欠けるヒューリスティック
人が何らかの意思決定をするときには完璧な分析はせず、簡略化した思考で判断しようとします。こうした思考方法をヒューリスティックと呼びます。なぜ人はヒューリスティックな思考をするかというと、できるだけ考えなくて済むようにして脳を使うのを節約しているからです。

■ヒューリスティックがゆえに生まれるバイアス(歪み)
しかし、ヒューリスティックは物事の判断を簡略化して考えようとするため、出てきた答えにバイアスが生じる可能性があります。たとえば、人は「高そうな服を着ている人は偉い人」、「安っぽい服を着ている人は貧乏人」というように見た目で人を判断しがちですが、反対に「詐欺師は身なりをよくしようとする」、「人格者は見た目よりも中身を大事にする」ということもあるかもしれません。

■陥りやすい確証バイアス
確証バイアスとは上記の例のように、自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向のことです。人は無意識的に苦痛を感じなくて済むように、自分に都合のいい情報ばかりを集めるようになり、都合の悪い情報はシャットアウトしようとします。特に、マネージャー職など重要な意思決定や判断を求められる立場の人は、自分にとって都合のいい情報ばかり見ていないか注意することが必要です。

■「これくらいなら大丈夫」と考える正常性バイアスと「皆と一緒だから大丈夫」と考える同調性バイアス
正常性バイアスは、人が予期しない事態に直面した時に、「ありえない」という先入観が働いてしまう心理のことです。同調性バイアスは、集団の中にいるとついつい他人と同じ行動をとってしまう心理のことです。一刻も早くその場を立ち去らなければならない緊急事態に正常化バイアスと同調性バイアスが働いて、逃げ遅れてしまうということが起きやすいのです。

■大事な判断ではヒューリスティックとバイアスに注意する
ビジネスの場では、その場その場で判断しなければならないことが日々起こります。全ての判断に対して時間をかけて慎重に行うことは現実的には難しいことです。しかし、あまり経験をしたことがないイレギュラーなことが起きた時には、正常性バイアスや同調性バイアスが働かないように注意しておくことが必要です。非常ベルが鳴っても、どうせ訓練だと思い込んでしまう社員はいないでしょうか?