- 2023.12.22
第七十稿「信用と信頼の区別が重要となる調達管理」―丸投げ発注の危険性―
■調達先のコンプライアンス違反
調達先の法律違反によって、自社の信用を失ってしまうことがあります。調達先の選定においては品質や納期、コストが重視されることが多く、コンプライアンスリスクは軽視されがちです。しかし、調達先が偽装や人権侵害、情報漏えいといった違法行為を行った場合、調達元の監督責任が問われることになります。
■調達先を経由するサプライチェーン攻撃
情報セキュリティにおいても調達管理の重要性が高まっています。サプライチェーン攻撃では、情報セキュリティ対策がしっかりしている企業を直接狙わず、その調達先を狙い、その社員を装った電子メールなどによって、調達元の企業を攻撃します。
■外部業者への依存度が増す社会
社員数を増やせず、仕事も高度化する中で、どうしても外部業者に仕事を委ねることが増えてきます。特にIT業務など社内に専門家がいないということで外部業者に丸投げされることが多くなればなるほど、事件事故が起きるリスクが高まります。
■消えない調達先に対する監督責任
自社製品やサービスの品質や安全の確保に外部業者が大きく関与しているとすれば、その監督責任が重要になってきます。品質や安全、コンプライアンスに関する契約書をかわすだけでは監督責任を果たしたとは言えず、その選定においては事前に能力評価を行い、納品後においても、不適切な行為があった場合は是正を求めることが必要です。
■信用と信頼の違いを意識していますか
社外調達する場合、信用と信頼の違いをしっかりと認識していることが必要です。信用とは能力や実績などにもとづいて相手を限定的に「用いる」ことであり、信頼とは無条件に相手を信じて「頼る」ことを意味します。信頼する、信頼されるということは、何度と繰り替えされた「信用」の積み重ねによってはじめて到達される状態であり、地道な「信用」の積み重ねなく与えられるものではありません。
■安易な信頼が会社を危険にさらす
何の根拠もなく調達先に対して信頼を与えることは、会社を危険にさらすことになります。丸投げすることは楽かもしれませんが、失敗すれば取り返しがつかないことになるのです。当たり前に思えることであっても、アンケートや調査票を使って確認したり、IT業務のような専門サービスの場合であれば、第三者による調査や評価を受けるということも考えられるでしょう。副資材や事務作業など軽微な業務と思われるものであっても、それが顧客などに与える影響を考えれば、慎重であるべきことかもしれません。